水曜日の片想い


ぐいっと、あいていた片方の手を引かれ、わたあめ屋さんから離れていく。


おじさんが「彼氏」と言っても橘くんは否定しなかった。


「違います」ってたった一言でよかったはずなのに。


一瞬でも、わたしは橘くんの彼女になれたって思っていいのかな。

もしかして、わたしが彼女でも……嫌じゃないかな?



「わたあめ、ほんとに貰っちゃってもいいの?」


「いいって言っただろ」


いつもの素っ気ない返事でも、優しさがこもってるのがよくわかる。


「そっか。ありがとう……!」



橘くんがくれた優しさにドキドキしながら、わたあめを一口頬張った。


出来立ては特に美味しい。

甘くてとろけるこのふわふわの感触がたまらなく好き。



「ん〜、美味しい!」


思わ勝手に口が動いてしまうくらい。


< 180 / 291 >

この作品をシェア

pagetop