水曜日の片想い
「………そんなに人の顔見るなよ」
口元に付着したわたあめを指でなぞり、少し動揺した顔でわたしを見ていた。
「あはは、ごめんね」
ようやくハッとして慌てて視線を逸らしても、今度は不信感を抱いた橘くんがわたしをまじまじと見てくる。
ううっ……そんな見ないでよ……。
変なこと考えてたのバレちゃうじゃん。
橘くんとキスがしてみたいって。
わたしは本当にバカだ。
夢ばかり見て肝心なことは何もできていない。
本を読んだり、勉強や料理を頑張ってみたり、少しでも橘くんに近づきたくてお昼や放課後に会いに行ってみたり。
自分なりの努力はしてるし、少しずつ距離が縮まっている気はしてる。
でも、それだけだ。
努力したところで、橘くんの釣り合う人になったと思ったところで、わたしは果たして橘くんの彼女になることはできるのだろうか。
いくら釣り合う女の子になれても橘くんがわたしを選んでくれなきゃ意味がない。
好きにさせるって、どうやって?
そんな誘惑みたいなことわたしにできるの?
そんなことするくらいなら、まず自分の気持ちを正直に伝えるべきなんじゃないだろうか。
わたしは恋愛のスタートラインにすら立てていなかったことを今更気がついた。