水曜日の片想い

特別な時間



「ふぅ……」



一息吐いてから、そっとドアノブに手を掛ける。


ここの扉を開くのは今日で何度目だろう。


何回経ってもまだ慣れない。



ドキン、ドキンとリズムよく心臓が鳴る。



ーーーよしっ。



ガチャリと扉を開くと、よく見慣れた“あの人”がカウンターに座っていた。




「た、橘くん!おはよう」



「………もう放課後だけど」



「あ、そうだよね!あはは……」



ひやりと冷たい返事だったけど、今日もちゃんと挨拶ができた!


友達に「おはよう」じゃなくて「こんにちは」って言うのはちょっと違和感。


放課後はなんて言えばいいんだろう。


ふつふつとそんなことを考えながら、適当な本を選んでいつもの席に静かに座った。


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