水曜日の片想い


橘くんの体、すごく熱い。


首筋から滲む汗と、耳元に吹きかかる橘くんの荒い呼吸。


たぶん走って来てくれたんだと思う。

抱きしめられる力が強くなっていくたび、本気で心配してくれているんだと伝わってくるから。


知らない男の人に触られたときは本当に嫌で怖かったのに、相手が橘くんだとこんなに安心するんだ。


ほっと力が抜けてきて流れる涙は止まらない。


怖くても涙が出るのに安心しても止まらないなんて涙って不思議だな。



「遅くなってごめん」


「橘くんは……悪くないよ………」



涙声で一言返事をするのが精一杯だった。


こんな真剣に心配してもらっているのにもかかわらず、わたしの心は正直すぎる。


こんなこと言ったらまた怒られるかもしれないけど、

わたしのために取り乱してくれて、わたしのために怒ってくれて、正直嬉しかった。


だって、どうでもいい相手だったらこんなに真剣に怒ってくれないでしょ?


橘くんにとってわたしは真剣になってくれる存在ってこと。


そろそろ本気で期待してもいいのかもしれない。


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