水曜日の片想い
「大丈夫よ。浴衣は汚れたけど、何もされてないわ」
「そうか……よかった……」
ポンッと百合ちゃんの頭の上に落ちた橘くんの大きな手。
真剣な瞳は熱を引き、甘く優しい瞳に変わっていた。
あのキャラメル色の瞳には百合ちゃんだけを映している。
わたしなんか一切眼中に入っていないような気がした。
まるで、わたしと橘くんの間に見えない線が引かれたみたい。
「ふふっ、心配性なんだから。それよりどこかに水道ないかしら?浴衣の汚れをどうにかしたいのよね」
「あっ、わたしハンカチ持ってるから水道で濡らしてくるよ!」
「それなら俺も………」
「すぐそこだから大丈夫だよ。橘くんは百合ちゃんと一緒に居てあげて」
1人、逃げるようにその場からパタパタと走り出した。