水曜日の片想い


これ以上2人を見ているのが辛かった。

わたし以外に向けられている橘くんの優しさに腹が立って仕方なかったの。


あんなに優しくしておいてって………。


「冷たいや……」


夏には心地いいはずの水道水が異様に冷たく感じてくる。


鳴り止まない花火の音も今はうるさいくらいだ。


告白の返事をもらう前に逃げ出して………何やってんだろ。

ちょうどタイミングよく百合ちゃんが来たのもあるけど、負け犬みたいなことして恥ずかしいよ。


でも、逃げるしかなかった。

嫌な予感が止まらなかったの。


橘くんと百合ちゃんが並んでいるとやっぱりお似合いだなと思うし、百合ちゃんは1人でいると危なっかしい。

あんなに可愛い子を男の人たちが無視できるはずないもん。


守ってあげなきゃてきっと思うはず。

幼なじみなら尚更、ね。


濡らしたハンカチを片手に、フラつく足を無理やりズルズルと動かして歩いた。

橘くんたちの元へ戻るのが苦痛で仕方ない。


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