水曜日の片想い


こんなんじゃ上手く笑えないよ……。

まだ橘くんの気持ち、聞けてないのに。


「っ………」


泣いちゃだめ、笑わなきゃ。

無理やりでもいいよ。

涙を見せるよりずっとマシだと思うから。


わたしが泣いて戻ってきたら橘くん心配するだろうし、今は怖い思いをした百合ちゃんを支えてあげなくちゃいけないんだ。


わたしが絡まれたときは橘くんが助けてくれたけど、百合ちゃんは違うんだもん。

1人で心細かったよね。


そんな百合ちゃんを妬んじゃうなんて心狭すぎだよ。

橘くんのことになると余裕がなくちゃうこの性格、直さないとなぁ。


グッと目元に力を込めて、落ち着けと心の中で何度も繰り返し唱えた。


「ふぅ……」


ぶつぶつと言葉を繋げているとようやく2人の後ろ姿が見えくる。


なんか、距離が近いような……。


落ち着こうとは思ったけどやっぱり実際見ると妬けてしまう。

花火の明かりに照らされた2人の姿は綺麗だし、見惚れてしまうのも事実だから。


それでも橘くんのすぐ側に百合ちゃんが居るだけで胸の奥がモヤモヤするんだ。


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