水曜日の片想い


「なんだよ急に」


額から一筋の汗が流れた。

首筋を通り、じわりと浴衣に染み込んだ。


「1人で男たちに絡まれたとき、正直怖くて心細かったの。誰も助けてはくれないし旭陽も隣には居なくて…………」


「おっ、おい。泣くな」


「っ……泣いてなんか、ないわよ」


「助けに行けなくてごめん。もう百合を1人にしないって約束するから」


声が出ない。

並んで話す2人をただ見ていることしかできなくて、繋がる一言一言に体が震えてくる。

まだ橘くんから直接告白の返事を貰ってないのに、こんなところで…………。


鳴っているはずの花火の音も気にならなくなるくらいわたしの耳には橘くんと百合ちゃんの声しか聞こえなくなっていた。


「これからは、俺が百合を守るよ」


「旭陽………」



目に映る情景は幻?それとも夢?

花火の見過ぎで目が狂ってしまったのだろうか。

そう思い、何度か目を擦ってみたが何も変わらない。



橘くんが百合ちゃんを抱きしめている。



紛れもない現実だった。


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