水曜日の片想い


胸騒ぎがする。

せっかく近づけたと思った橘くんが遠ざかってしまうような気がした。


「ありがとう。ずっと側に居てね」


わたしが必死になってここまで距離を縮めたというのに、百合ちゃんは一瞬で………




「好きよ、旭陽」




一瞬で奪い去っていく。


花火と重ならなかった百合ちゃんの声は、わたしの耳にはっきりと言葉を焼き付けた。

さっきわたしが言った言葉と同じ。


「好き」って、やっぱりそう。

百合ちゃんも本気で橘くんが好きなんだ。


橘くんも百合ちゃんのこと………。


嫌だ。

嫌だよ。


橘くんを取らないで。


わたしだって橘くんが好きだよ。


ずっと逃げてきたけど、想いを打ち明けたばかりなんだ。

答えを待っている途中なのに……今日からスタートラインに立てるはずだったのに………。


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