水曜日の片想い
キスってどんな感じなんだろうと軽く考えていた。
夢を見るだけで実際に自分じゃしたことはないし、友達とだってキスの話なんかしたことなかったけど。
ようやく知ってしまった。
大輪の花火に照らされて重なる2つの唇。
これが、キス。
わたしの目の前で橘くんと百合ちゃんの唇が重なっていた。
逸らしたいのに逸らせない。
逃げたいのに逃げられない。
自分の体なのに思うように言う事を聞いてくれなかった。
橘くんのことがこんなに好きなのに。
好きも、キスも、全部わたしじゃだめなんだ。
終わりたくない。
橘くんのこと、好きだもん。
でも……。
「っ……」
ようやく呪縛から解放された体で、少しでも橘くんたちから離れようと駆け出した。