水曜日の片想い


そういえばそんな嘘をつかれたこともあったっけ。

真実だったらと思うとなかなか受け止められる気がしなくて、ずっと先延ばしにしていた。

それでも勇気を出して橘くんに直接聞いて嘘だとわかったときは本当に安心したな。

まだわたしにも望みがあるんだと。


今ではそんなの意味なかったけどね。

結婚の約束をしていなくたって橘くんが百合ちゃんを選んだら同じこと。

変わらない結末だ。


「それならどうして旭陽の好きな人の名前は聞けないわけ?結婚の約束の真意を聞くのも好きな人の名前を聞くのもたいして変わらないじゃない」


「っえ……」


わざわざ橘くんに聞かなくなって百合ちゃんと付き合っているのだとわかってるから。


結婚の約束は直接聞かないとどうしようもなかったし、聞く以外に選択肢がわたしにはなかったんだ。


それにわたしは……もう橘くんに会う気はない。

忘れるって決めたんだもん。

橘くんの好きな人なんかもうわたしにはどうだって…………。


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