水曜日の片想い


「橘くん………」

顔を上げると、そこには何も変わらないあの橘くんが立っていた。


なんだ、図書室にはちゃんと来てるんじゃん…………。


動揺や変な奇声を上げることもなく、ただただ心の奥でほっとした。

橘くんが図書室に来てないんじゃないかって心配したんだもん。


よかった。


「あの、橘く………」


「………」


話をしようと名前を呼び直したのに、


「えっ」

最後まで言い終わる前に橘くんは背を向けてわたしから離れていく。


なっ、なんで……?

図書当番だから図書室に来たんじゃないの?


行かないで、待ってよ。

わたしまだ何も言ってないのに。


すぐに立ち去りたくなるほどわたしに会うの嫌になっちゃった?


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