水曜日の片想い


「橘くん!!!!」



橘くんを追い越して、目の前で叫んでやった。

さすがにびっくりしたみたいで目が丸い。



「…………なに?」



ようやく気づいてくれた。


これで気づかなかったら、蹴りを入れるしかなかったよ。



相変わらず不機嫌そうな顔だけど気にしない。


先手必勝、言ってやれ!




「い、一緒に………帰ってもいい?」



声は震えてるし、顔は赤いし、まともに橘くんの顔が見れていない。


なんたって図書室以外で声を掛けたのはこれが初めてだ。


片想いの相手に帰りを誘うのは、きっと誰だって緊張すると思うの。


わたしの勇気がどうか………届いて……。



返事を待つ間のこの一瞬が、たった数秒のはずなのに何時間も経ったような感覚。


自分の中の時間だけが狂っているみたい。


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