糠床日記
秋刀魚は八月が旨いよ、それがホントのトコなんだ実際。
と、魚屋(兼スーパー)の茶髪のお兄さん(いつも客に呼び込みしてるけどそれ以外に仕事してるの見たことない)に言われて、1尾280円もするのを買った。
「刺身用」。
秋刀魚は塩焼きじゃないよ、刺身がいちばん旨いんだホントのトコ(これは私の意見)。
頭と内蔵を除いて、ハラワタを洗う。
尾に刃先を入れて、腹に向けて裂く。
人間でいうと肋骨の付け根にあたる部分を、少し力を入れて断ち切る。
そうしたら背側を、また尾のあたりからスーッと刃を滑らせて骨を離す。
三枚におろす手順はいくらでも優雅に説明できるけれど、果たしてまな板の上に残ったのは優雅の「ユ」の字のカケラもない、薄っぺらい銀色の肉片と、太った骨。

そして、捨てようとしたハラワタがあまりにも旨そうだったから、ホイルにのせてオーブンでパチパチ焼いたのだった。え?

食べた記憶がない。ハラワタは。
今、深夜3時。
思い出した。焦げたハラワタはまだオーブントースターの中に残っている。
なぜ忘れてしまったんだろう。
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