右肩の蝶、飛んだ。
それも、最初の3年ぐらいだったけれど。
結婚と妊娠を期に、今度はその元女優は子供服のデザイン会社を設立。
何故かうちの工房とは全く違う場所で、だ。
お陰で蔑にされ新作のデザインも出来ず、この数年は置いていた式場と契約も切れて返されてくるばかり。
踏んだり蹴ったりとはこのことだ。
「大丈夫だって。君は本当によく頑張ったよ。俺に力が無かっただけだから君はそんなに胸を痛めなくて良いんだよ」
「私は、短大を出てこの工房に就職して貴方に出会えて――本当に大切な場所なんです。貴方の力になれなかった分、せめて最後まで足掻きたいです」
営業で色んな場所に電話したり訪問したり。
貴方が頑張っていたのは、この六年ずっと見ている。