右肩の蝶、飛んだ。
四、赤白
「店長、私、結婚しちゃうかもよ」
「……」
開店前にお邪魔すると、眉毛を脱色中の店長が居た。
眉毛も色素薄いなあと思ってたのに、脱色してたのか、という気持ちは置いておいて。
「聞いてる?」
「聞いてるけど、胡蝶の顔が結婚する前からブルー入ってるから。報告ぐらい嬉しそうにして欲しいわ」
「嬉しそうな顔って?」
「馬鹿みたいに歯茎見せて笑いながら、こうよ!」
両頬を抓られて、上へ持ち上げられた。
「やだっ 手にファンデがついちゃったわ。化粧濃い過ぎ」
「自分で触れてきたくせに」
「セクハラみたいに言わないでちょうだい。全くもう」
店長は、面倒くさそうに手を洗うと全麦パンを切ってオーブンに放り込むと、グラノーラかけヨーグルト、生姜紅茶という質素なメニューが並べられた。
「店長、ダイエット中?」
「そうなのよね。BARなんてすると、夜にお酒飲んじゃうから、ビール腹が怖くて」
しみじみと言いながら、私にはパンにバターをくれた。