右肩の蝶、飛んだ。
「歪んでるわ」
「歪んでるからこそ、直臣さんに見初められたののだと思っておく」
味わう幸せは、簡単に無くなってしまった。
酸っぱいだけのヨーグルトに、近くにあった紅茶用の砂糖を入れてみる。
それでも幸せの痕のヨーグルトは甘くはならない。
「これ以上は望んだらいけないけど、でも直臣さんを受け入れることぐらいは出来るようになりたいのよね。口の中が苦くなる前に」
「ちょっと、朝から生々しい話は止めてね」
……。
なんで生々しい話って分かるんだろ、この店長怖いな。
ヨーグルトが酸っぱすぎてどうしていいのかもはや分からなくなる。
掻き混ぜていたら、店長はココアを振り掛けてくれた。
甘い、甘い。
店長は、私の為に説教してくれてるし、私の表情や仕草、気持ち、全て分かってくれようと理解している。
「何で、店長は結婚してくれないの」
「ぶっ。ちょっと! 脈拍もなく、意味も分からないこと言わないでちょうだい。結婚なんて面倒くさい」
人には幸せ云々言っておいて、自分も結婚に夢なんて見ていないじゃない。
絶対、ライトな身体の付き合いしかしてない。
この人こそ、恋愛に興味無いんじゃないの。