右肩の蝶、飛んだ。
「まだ何か考えてるけど、多分それ、全部外れだから」
眼鏡を外し、放り投げながら笑う。
「好きだから触ってるって、単純な事なんだよ」
単純――。
私はその単純なことを、直臣さんにできていない。
自分が反応しなくて良いのならば、口で処理する方が楽なように。
蝶矢に触れられて私は、反応できるのだろうか。
また、直臣さんみたいに悲しい気遣うような笑顔を向けられてしまうのではないのだろうか。
「胡蝶が抵抗しないのは、どうして?」
蝶矢が太股からスカートをせり上げながらそんな馬鹿げたことを言う。
「その方が楽かと思って」
我ながら可愛くない発言だなって思ったら、蝶矢も一緒だったようだ。
笑いながら、首筋に唇を這わせた。
そんな風にーー火傷しそうな熱を浴びせないで欲しい。
「一つだけ」
何故か私は、直臣さんに操をとか、悪いとか一切思う事も無く、ただそれだけを聞いた。