右肩の蝶、飛んだ。
「ん?」
「石垣さんとも、寝た?」
「――」
その目が大きく見開いて、口元だけ不器用に笑った。
――可哀想に。
あの世間知らずのお嬢様は、ただ真面目な青年に擬態した蝶矢に騙されて、奪われてるわけだ。
だから、あんなに態度も大きくて、やけに親密だと思ったんだよね。
馬鹿らしい。
「帰る」
「え」
「早く、送って。終電逃しちゃう」
身も蓋もない。
こんな関係、意味もない。
本当に――本当に私が好きなら証拠を見せて。
閉じ込めるだけじゃ、蝶は自由な空へ逃げたいという気持ちが消えなくて。
羽を切れば、その切った本人を憎んでしまう。
蝶を閉じ込めても、蝶からの愛情なんて貰えやしない。
蝶が肩に留まるぐらいの、信頼と愛情は、簡単にはできやしない。