右肩の蝶、飛んだ。

「やだー。今日は早く店じまいしちゃいましょう。明日の一番便ね。やだやだ。超面白そう」

ケタケタ笑う店長に、内心では不服だったけれど大人しく軽いアルコールのお酒を貰って飲み干した。

馬鹿馬鹿しくなっただけ。

何も手元にない私が、馬鹿みたいに身体を堅くしているのが。

日田の仕事だって、次は水曜のオーダーメイドドレスフェアの時に行けばいい。

だったらそれまで直臣さんの傍に居る。


「チケット取れたわよ。給料入ったら返しなさいよ」
「ふふん。ご祝儀代わりに驕ってくれてもいいけど」

強気な私に、店長はうっすらと苦笑いを浮かべると、Ⅴサインをしてきた。


「ちなみに、私も行くわ。面白いから一泊だけ一緒に泊まってあげる」

「――情事後の私は、超色っぽいからね」

「うふふふ。はいはいはい」
そう言いつつも全く店長は動じず、出歯亀することを楽しみにしているみたいだ。


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