右肩の蝶、飛んだ。
「婚約――じゃなくて結婚よね? おめでとう。式はどうするの?」
「そうだね。仕事が落ち付いてから、胡蝶が嫌がらなければ大体全てしたいけど――胡蝶はどう?」
「え、あ、うん。その前に一つ良いですか?」
直臣さんの言葉が全く耳に入らないので、代わりに社長へ尋ねる。
「社長と直臣さんってどんな関係ですか?」
此処まで恋人の私の前で、親密にされたら――潔すぎて言葉が出ない。

「あら、言ってなかったの。義姉と弟よ。血は半分は繋がってるかしら」
「え」
「でも、直臣の母親も有名な方だから、私たちが世間に血が繋がってるってばれるのは良くないの。だから、彼は私の大切な右腕って所かしらね。――直臣?」

確認するように目を合わせると、直臣さんも苦笑して頷く。
血は繋がってるけれど、世間では他人を演じている。そんな秘密が――二人をより深い絆で結んでいる。
彼が私に自分の両親の事を話さなかったのは――きっと凛子さんを守るためだ。

今からもこれからも。彼女を守り続ける。

身体の関係なんて無くても。

だから、私との身体の関係も――そんなに大事に思えなかったんだろうなって思う。
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