右肩の蝶、飛んだ。
蝶矢のホテルで、オーダードレスのフェアが終わる頃、うちの『Butterfly』の縮小も決まった。今度からやはり、子供服ブランドの方を重点的に頑張るらしい。
それを期に、直臣さんは東京の子供服ブランドの方で重役の就任する。直臣さんはそれをずっと前から知っていたから、私を東京へわざわざ連れて行って社長に紹介したかったんだろうなって思う。
それを叶えてあげることはできないけれど、これで良かった、はず。
店長は、只今、東京に新店舗を構えようと連日のように直臣さんと良い場所が無いか探している。気まずさはないけれど、店長の店で飲めるのももう後少しだと思うと胸が締め付けられる。私の初めて手に入れた居場所だったから。
「私も、東京に着いて行こうかな」
「なんでそうなるんだよ」
私と蝶矢しか居ない寂れたBARで、薄いウーロン杯を飲みながらついつい愚痴ってしまう。
「オーダーメイドの仕事はこれからも続けるんだろ? じゃあ、東京に行ったらあの工房誰が纏めるんだ」
「知らない。社長のブランドで持っていた部分はもう駄目になるし、私の信用だけってなればもう駄目だわ」