右肩の蝶、飛んだ。
「じゃ、大丈夫だね」
「これで大丈夫なの?」
理想の母親像に爆笑してた私の手を蝶矢が優しく握る。
「そんな、素敵な母親になってよ」
「――へ」
「俺と、結婚しよう」
握った手に口づけを落として、蝶矢は不敵に笑った。
「返事はもう聞かない。どうせ、逃げようとしちゃうんだから」
「あ――、えっと、色々とそれは」
問題があると思うんだけど、蝶矢の笑顔は全く崩れなかった。
「大丈夫。全部、俺に任せて」
頼もしくそう笑う蝶矢に、――多分私は敵わない。
観念してその手を強く握り返した。
自由な空の下で、羽ばたくように、自分の意思で握り返した。
Fin