右肩の蝶、飛んだ。

その麟紛は、私の心を溶かす、冷たい炎の様だ。
冷たく私を――溶かしていく。
骨まで、溶かせて、私の痕跡を1ミリも残さないんだ。


「素敵ね。貴方の情熱もしっかり伝わったわ。残るは、契約を詰めていくだけのようね」

その言葉に、狂いだしていた思考回路をはっと現実へ合わせていく。
私は今、蝶矢の揺さぶりに簡単に反応してしまっていた。

「契約の事はオーナーに任せます。ホテルウエディングの企画、担当は、オーナーの伯母であります私が連絡致しますが、決定権は全てオーナーに委ねて要りますので」


此処で、漸く彼女から名刺が渡された。認められたと、考えて良いのだろうか。

渡された名刺には、『女将 高山 雛菊』と書かれている。
女将がいるような、もっと和風なホテルだったこのホテルは、蝶矢の代で色々と変革したのかもしれない。

「ありがとうございます。宜しくお願いします」

やんわりと、媚びることなく自信に溢れた力強い直臣さんの言葉に、私も続けて頭を下げる。

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