右肩の蝶、飛んだ。
「ふうん。それが怖いの?」
「いえ。挟みで、ほんの少しだけ羽の先を切られちゃうの。本当に少しだけ。――切りこみを入れたりも」
「うーーん。それはちょっと可哀想だね」
席を向かい合わせに動かすと私は、目の前の席に座った。
隣に座るより、向かい合わせの方がちょっと楽だったし。
「蝶を逃がさないように、でも綺麗なまま閉じ込めたかったみたい」
「籠に閉じ込めればいいのに。籠なら傷つけずに綺麗な蝶を眺められるのにね」
直臣さんが、怖い夢を変な夢だと片づけてくれて少しだけ気持ちが楽になる。
そうなんだ。綺麗ではなくて、残酷なのに、怖いのに、何度も何度も夢に見るのに、
私はその夢を嫌いとは思わなかった。見たくないとは思うけれど、嫌いではない。
その意味は、自分にしか分からないと思うので飲み込む。