右肩の蝶、飛んだ。
「昔弟だっただけで、全然恋愛対象じゃないわけではないだろ」
「……それは、抱かれたいか抱かれたくないかで考えろと?」
「行き遅れても俺なら貰うよ」
敬語が崩れた。
あっさりと、年下の余裕の中が垣間見える。
婚約者がいると思って冷たい態度だったのだと思うと、蝶矢って案外単純なのかもしれない。
処女なら、婚約してても直臣のモノだとは思っていないのね。
「もう疲れた、寝る」
「勝手すぎる。こっちはずっと探してたのに――」
「こうやってまた自分の元に縛って、傷つけて閉じ込めてしまう為に、よね」
馬鹿だねって笑顔が零れてしまった。
蝶矢の狂気は覚えてるよ。忘れたことなんてない。
でも、そんな関係が私たちにはお似合いなのかもしれないね。