右肩の蝶、飛んだ。
ネクタイを解こうと片手で奮闘してみたけれど、結び目は思った以上に硬くなっていた。高そうなブランド品のネクタイが私の歯型だけらけになったのが面白かったけど、すぐに蝶矢に引っ張られて終わった。
「駄目ですよ。一緒に寝るんですからこのままです」
「そう言って、アンタがムラムラしたら不感症の私はどうなるのよ」
「美崎さん、本当に自分が男に反応しない身体だと思っている?」
「あんな美形でリードしてくれて、優しくて私をお姫様の用に扱う恋人が駄目だったんだから、反応しないと思うけど」
「じゃあ、――試してみる?」
視界が遮られたと思ったら、蝶矢が私の上を跨ぐ。
ベットが軋み二人の体重で沈む中、蝶矢の射抜くような真っ直ぐで鋭い眼差しに息をするのも忘れてしまう。
「試していい?」
「試しで処女喪失ってなんか空しいから、駄目」
「26にもなって、喪失に夢持ってるの」