右肩の蝶、飛んだ。
ソファで、座って舌を向いて眠っている蝶矢を横目に、簡単に荷物を纏めて部屋を出た。
テーブルに置きっぱなしになっていた焼きそばとお好み焼きを失敬して、電車の中で食べたのは内緒だ。
どうしてこうなったのか、それとも会えばこうなると予感していたのか、今さらもう何を言っても言い訳にしかならないけれど。
私と蝶矢は最初からきっと、姉と弟という枠には当てはまれなかったんだと言う事だろう。
隙のない、むっすりした顔で眠る蝶矢を見て、胸が痛んだ理由は言葉に表しずらかった。
蝶の羽音が聴こえて来ないのと、同じ理由な気がする。
壁に飾られた羽を広げてピンに刺された蝶のよう。
「貴方達ってこれに当てはまるのかしら。ジェネティック・セクシュアル・アトラクションですって」
「変な本読まないでよ」