右肩の蝶、飛んだ。


いちいち店長は刺さる言葉ばかり言ってくるんだから腹立たしい。

「でも、今日はちょっと表情が生き生きしてるわよね」
「は?」

ホットサンドに被りつこうとした大きな口のまま、動きを止めてしまう。
いやいやいやいや、それは酷い。

「いつも、死んだような目? 負のオーラ漂わせてさ、必死で仮面つけて笑ってるみたいな、明らかに幸薄いアピールしてるじゃない。貴方」

「悪かったですね」

仮面を付けて笑っているって、その通りなんだけど、でも、店長には私の擬態はぎこちないのだろう。

「大丈夫よ、人って自分が一番好きじゃない? だから貴方の仮面みたいな笑顔は私しか気づいてないと思うわ。でも、今の大雑把で結構私の前では気を使わない感じの、素が垣間見える貴方って好きよ」

「店長に好かれても嬉しいって素直に思えない」


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