右肩の蝶、飛んだ。
「でも、大丈夫だよ。契約が取れなきゃ倒産しちゃえば」
「なんでそんなに直臣さんは気楽なんですか」
「俺、色んな会社から声をかけられてるし、結婚しちゃえば良いだろ、俺らも」
「け!?」
思わず太ももに揃えて置いていた両手をばっと上にあげて、変な声が出てしまった。
声が裏返って、変な汗が出る。
「あ、でも借金はどうするんだろ。彼女持ちなのか俺にも何割か負担来るのかな。あはは」
「笑ってる場合じゃないですよ! それ」
呑気な直臣さんにさらに胃がきりきりと締めつけられる。
アトリエ工房『Butterfly』もオープン当時は、事務の私でさえびっくりするぐらいお給金が出た。女優を引退してデザイナーになると言って成立した会社だったからだ。
第一段のウエディングドレスは、全国の結婚式場に置かれて、買い取りが殆どだったけれど、着た分の何割が振り込まれるシステムの式場では、びっくりするぐらいの売り上げだった。