右肩の蝶、飛んだ。


夕方、駅に直臣さんを迎えに行くと、小さなブランドバックだけを持った日帰り姿のような彼をすぐに見つけた。

何処に行くにも荷物が少ないのは不思議だけれど、彼らしくて私は好き。


「お疲れ様です」
「ありがとう。胡蝶もお疲れ様です。大変だったよね、クレーム」
「……あはは」


例の件は、蝶矢が説明して誤解を解いてくれて――彼にも電話で説明してくれたらしい。
私が店長とだべっている間に、処理をしてくれた蝶矢には複雑な気分だ。

「出張はどうでした?」

本当は、直臣三の機嫌の良さを見れば一目瞭然なんだけれど、聞いてあげた方がもっと機嫌が良くなるのは熟知している。

「上手くいったよ。神戸で行われるコレクションに、新作のドレスを出展出来ることになったんだ。ちょくちょく神戸へ出向くことになるかな」
「凄い!」

新作が出る前の、落ちぶれた女優のレッテルのせいで売れ行きが苦戦されていた日々が嘘のようだ。

「で、着てくれるモデルさんも決まってね。――これあげるよ」

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