右肩の蝶、飛んだ。
小さな紙袋を受け取ると、エスカレーターで二人のんびりとタクシー乗り場へ向かう。
中を覗くと、赤いパッケージに黒い蝶の美しい香水が入っている。
「『バタフライキス シークレット』 名前まで素敵ですね」
「秘密が多い胡蝶のイメージにぴったりだったんだ。ミステリアスだろ?」
「ありがとうございます」
ミステリアス……。ただ聞いてこないだけじゃないのかな、とか。
神戸にいる女性が付けている香水を私にも付けさせて浮気を隠すつもりじゃにのかな、とか。
色々勘ぐってしまうのは――当たってるからなんだろうな。
今日の直臣さんからは、ブルガリの香水の匂いがしない。
直臣さんがそんな分かりやすいヘマはするはずが無いから、試されてるんだろうなって瞬時に理解出来た。
「神戸っぽい御土産の方が良かった?」
「いいえ。直臣さんが私の為に選んでくれたのなら、何でも嬉しいです」
馬鹿みたい。満点花丸の、出来た彼女の回答に自分でも吐き気がする。