右肩の蝶、飛んだ。
蝶をモチーフにした小物は嫌いだし、集めるのも嫌だ。
昔、父の書斎の壁に飾られていた蝶の標本を思い出して悪寒しかしない。
「良かった。喜んで貰えて嬉しいよ」
綺麗な蝶の――綺麗な世界。
袋から使うとき以外は絶対に取り出してやらない。
「今日は、うちでのんびりする? 胡蝶の家が良いかな?」
袋に香水を尚していたその腕を掴まれて、一瞬びくっと身構えてしまった。
昨日の痕を隠した腕の方だったから。