右肩の蝶、飛んだ。
「それは、まあ直臣さんらしいよね」
「なんで? まあ、でも綺麗だなって欲しいなら捕まえて――閉じ込めちゃおうかな。駄目?」
自分のものだと思ったら、閉じ込めちゃうんだ。
きっと、誰にも見せないで、隠して。
今、この部屋に迷い込んだ憐れな蝶が居たら、きっと迷子だろう。
羽を休める場所を間違えれば、閉じ込められてしまう。
どこもかしこも、ドレス『Butterfly』のロゴが入ったミニドレス。
偽りの蝶なのに、本物よりも着飾って綺麗で、本物なんてきっと紛れても掠れて消えてしまう。
――可哀想に。
「で、そろそろこのウエディングドレスがひと段落したら、結婚してくれる?」
「はい?」
ぼうっと居もしない帳に同情していたら、彼が私の腰に手を回し、そのまま膝の上に強制的に座らされた。
「違った。結婚しよう、だ」
彼らしい言い方。
そして、彼らしい決め方。