【完】何度でも、キミの瞳に恋をする。
途端、ざわめいていた空気が一瞬で変わる。
あたりはしーんと静まり
重い空気が漂った。
「挑戦者、1年Aクラス 水瀬莉衣〈みずせ りい〉。
代表者、指名。1年Sクラス 牧夏瑠璃〈まきなつ るり〉。
競技場のシールドに入ってください。」
審判のことばにあたりがざわめく。
「「瑠璃さまー。」」
叫ばれた言葉に余裕そうに手を上げる牧夏さんに、
リリーちゃんが言っていたお嬢様気質というのが、
少し、わかる気がした。
………というか、リリーちゃんって莉衣って名前だったんだね。
知らなかったよ。
今まで堂々とリリーのほうを名乗っていたし、
テスト用紙にも正式な書類にも水瀬リリーって書いてあったから
それが本名だって心の底から信じてたよ。
むしろもう、潔いいね。
いいと思うよ。うん。
なんて、私が思っているうちに、
競技場の真ん中にさらに張られた丸いドーム型のシールドの中に
牧夏さんとリリーちゃんが入っていく。
牧夏さんは、驚くほど堂々としていて、
リリーちゃんの赤毛を流し目でいちべつし、
この子に負けるわけがない、
って、思っているのがひしひしと伝わってくる。
牧夏さんのいえは元貴族らしく、その証である栗色の髪は
しなやかになびいていた………―