【完】何度でも、キミの瞳に恋をする。
リリーちゃんは手持ち無沙汰にしている。
「ごめん。……その、ケーキ作ってたら忘れちゃって………」
そういってリリーちゃんはおずおずとケーキを差し出す。
「あの………ちょっと、心して開いて?」
ケーキを開くのに心するって………
なんて思いながらもいっちゃん先輩を見守る。
「ごめんっ!」
いっちゃん先輩がケーキを開くのと同時にリリーちゃんが叫ぶ。
「チョコが1回溶けちゃったんだ。」
白いホールケーキの真ん中にドローっとした茶色い物体に
震える文字で『いっちゃん Happy Birthday』と書いてあった。
「ホラーだな。」
「こらっ」
小声で呟いた聖をたしなめる。
きっと、リリーちゃんのことだから
チョコを置いたあとチョコペンで文字を書く練習でもしてたんだろうな。
「大丈夫、形が変わっても味は変わらないよ。」
リリーちゃんが料理がうまいのを知っているのだろう。
そういっていっちゃん先輩は笑った。
リリーちゃんは料理得意だし、味は大丈夫なはずだ。
でも、リリーちゃんはその言葉に固まった。
「実は………砂糖入れすぎちゃったんだ。
いっちゃんって甘いの苦手だったよな……………」
そう言って不安そうに顔を上げる。
そういうことか………。
いっちゃん先輩はリリーちゃんの静止を振りほどき、パクリとケーキを口にした。
あまっ、
とこぼすも食べ続ける。
「む、無理して食べなくていいぞ?」
「別に無理してないよ。
だって、莉衣ちゃんががんばって作ってくれたんでしょ?」
「そうだけど………今度他の渡すから………。」
渋るリリーちゃんをいっちゃん先輩は抱き寄せた。
「他のなんて、いらない。」
でも、と顔を上げたリリーちゃんにいっちゃん先輩は微笑む。