【完】何度でも、キミの瞳に恋をする。






☪︎


˚




「どうしよう。」





私は、小さくつぶやく。







教科書のことしか考えてなかったから

無意識にここまで来ちゃったけど………








聖の部屋にひとりで入るんだよね………?







はぁ、なんか緊張してきた。



悪いことしてる気分になりながらそっとドアノブを回す。









「えっと数学…数学……」






棚いっぱいにずらりとならんだ背表紙に目をさまよわせる。





「あった!」




私は、青い数学の教科書をつかむと急いで外に出ようとした。













………だって、もう、心臓もたないもん。



なんか、いい匂いするし。




















―コロン



その時、何かがつま先にあたって転がった。






「なんだろう………?」





不思議に思ってしゃがみこむと



そこには小さな白いプラスチックケースが落ちていた。









「フィルムケース………?」



丸いそれはフィルムケースのように見える。






上に開いた跡のような隙間があるから、現像が終わったものだろう。






そう思って私は、そっとふたを開けると光にかざした。









「わぁ………綺麗。」






そこには


太陽に伸びる向日葵や


朝露にきらめく紫陽花、


優しい光に包まれるスミレ草の


写真が映っていた。











写真なのに、植物が、“生”きている。






私はネガのフィルムを丁寧に巻くと


またフィルムケースにそっといれて蓋をしめて





聖の机の端に置いた。





< 194 / 254 >

この作品をシェア

pagetop