【完】何度でも、キミの瞳に恋をする。
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「どうしよう。」
私は、小さくつぶやく。
教科書のことしか考えてなかったから
無意識にここまで来ちゃったけど………
聖の部屋にひとりで入るんだよね………?
はぁ、なんか緊張してきた。
悪いことしてる気分になりながらそっとドアノブを回す。
「えっと数学…数学……」
棚いっぱいにずらりとならんだ背表紙に目をさまよわせる。
「あった!」
私は、青い数学の教科書をつかむと急いで外に出ようとした。
………だって、もう、心臓もたないもん。
なんか、いい匂いするし。
―コロン
その時、何かがつま先にあたって転がった。
「なんだろう………?」
不思議に思ってしゃがみこむと
そこには小さな白いプラスチックケースが落ちていた。
「フィルムケース………?」
丸いそれはフィルムケースのように見える。
上に開いた跡のような隙間があるから、現像が終わったものだろう。
そう思って私は、そっとふたを開けると光にかざした。
「わぁ………綺麗。」
そこには
太陽に伸びる向日葵や
朝露にきらめく紫陽花、
優しい光に包まれるスミレ草の
写真が映っていた。
写真なのに、植物が、“生”きている。
私はネガのフィルムを丁寧に巻くと
またフィルムケースにそっといれて蓋をしめて
聖の机の端に置いた。