その嘘に踊れ
「ごきげんよう、しーちゃん。
俺はアオっていうンだ」
異国のイケメン誘拐犯…アオは、照明を点けながら壁ドン時のように優しい笑顔を見せた。
けれど透子は反応しない。
ジっとアオを見つめ続けているだけ。
「どうしたの?
学校の友達といつもそう言い合ってたから、しーちゃんの挨拶は『ごきげんよう』だと思ってたンだケド…
違った?」
「…
ひでぶ」
やっとなんか喋った!
でも、なんかいきなり破裂した!?
「…俺今、経絡秘孔とか突いちゃったっけ?」
「…
いえ、お気になさらず。
ごきげんよう」
あ、フツーになった。
よかった。
おまえはもう死んでなかった。
「ずいぶん落ち着いてるンだね。
怖くなかった?
一人にしてごめんね?」
アオはちょこんとベッドに座る透子に近づき、その足元に膝を落とした。
そして、彼女の手首を飾る枷から伸びるチェーンに、そっと指で触れる。
「コレ、しーちゃんが体勢を変えるのに充分な長さにしたつもりだケド、不便じゃなかったカナ?」
「…
大丈夫です。
ご配慮いただき、感謝します」