その嘘に踊れ
電車を降りて足早に歩くアオの目に…
「アーオーくん♪」
ヘーゼルと金の色彩が飛び込んできた。
なんだ、カルロスくんか。
や、違った。
『デイジー』だったね、そうそう。
別にオメェは見たくない。
灰色の風景に視線を戻したアオは、言葉も返さず歩き続けた。
けれど、自己主張の強い金色は追い縋り、許可もなく隣に並ぶ。
「ちょっとぉ、無視はないンじゃなぁい?」
「…」
「前も思ったケド、アンタってヤな奴よね」
「…」
「透子ちゃんに対する態度とソレ以外に対する態度が全然違う、とってもヤな奴よねっ」
「あぁ。
だから構うな。
面倒事に巻き込まれたくねェだろ」
おっと。
バリトンボイスが聞こえましたよ。
デイジーは目を瞬かせ、ほぼ同じ高さにあるアオの端正な横顔を見つめる。
それから、ニヤリと片方の口角を歪めて…
「やっだぁ、ソレって優しさ?
アンタ、ワケありなのぉ?」
と、茶化すように言った。
カルロスくん、その顔、男前だネ。
オネェ言葉がほんと惜しいネ。