その嘘に踊れ
ご配慮、て。
突然拉致されて。
気づいたら鎖で繋がれ、ドアにも窓にも届かない狭い範囲に行動を制限されて。
ソレってつまり、監禁されて。
感謝、て。
このコ、ちょっと感覚オカシィ?
まさかショックでイカレちゃった?
「ね、ね、しーちゃん?
具合悪いンじゃない?
もう少し休もっか?」
アオは心配そうに眉根を寄せ、表情のない透子の顔を覗き込んだ。
が…
「いえ、体調はすこぶる良好ですので、休息の必要はありません」
あくまで冷静に、しかも丁重に、透子は感情の読めない声音で抑揚もなく言う。
「それより、お伺いしたい点が幾つかあるのですが」
「ナニ?ナニ?
なんでも聞いて?」
「では、まず…
『しーちゃん』って、どなたです?」
デスヨネー?
不思議に思ってた。
きっとみんな、不思議に思ってた。
「君。
ア『シ』ハラトーコだから、『しーちゃん』」
…
どーしてその一文字をピックアップして、愛称をつけた。