その嘘に踊れ

「イイのよぉ。
どうせ使えない貰いモノなンだから」


ビールの缶をユラユラと揺らしてそう言ったデイジーは、軽い足取りで透子に近づいた。

そして彼女に手を伸ばし、髪を触るついでに白い頬を手の甲で撫で…


「思った通り、よく似合ってグギっ」


セリフの途中で、奇声を発して仰け反った。

どーしてかって?

アオが、まだ開いてないビール缶を投げつけ、見事デイジーの顔面にヒットさせたからデスヨ、ハイ。


「ちょ…
ナニすンのよ!?痛いじゃないの!?」


ゴツい手で赤くなった鼻を押さえてデイジーは喚くが、アオは涼しい顔でそっぽを向いてスルー。


「無視!?オトメの顔面傷つけといて、無視!?
やっぱ優しさなんて皆無だわっ。
アンタ、MAXヤな奴だわっっっ!!」


ますます激昂したデイジーが足を踏み鳴らして喚くが、オトメではないので、やっぱアオはスルー。

あまりに華麗なスルーっぷりにキ──っなんて歯ぎしりしていたデイジーだったが、急にニンマリと唇の両端を吊り上げた。

それから、馴れ馴れしく透子の肩を抱き…


「ねェェェ、透子ちゃぁぁぁん?
その真っ赤なルージュ、このヤな奴から貰ったンでショぉぉぉ?」


と、なんだか関係なさそうなコトを言い出した。

うん、まぁ、そーだケド。

確かに紙袋に入っていたのは、髪飾りとその口紅だったケド…

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