その嘘に踊れ

「ハイ。
それがナニか?」


唐突な問い掛けに、透子も戸惑っているようだ。
指で艶めく赤い唇に触れ、小首を傾げている。


「やっぱりねェェェ。
やめときなさいよぉ、透子ちゃん。
女友達に嫉妬したり、ルージュをプレゼントしたりする男なんてさ」


女友達って…
ひょっとして君のコトかい?デイジーくん?

ソレをどう捉えるかはひとまず置いておいて、ルージュのプレゼントの、いったいナニがいけないの?


「どうしてですか?」


さらに首を傾げて訊ねる透子の目の前を、またも飛来したビール缶が通過する。


「男が女に贈るルージュにはね、透子ちゃん?
『少しずつ返してくれ』っていう、エロスと独占欲満載の裏の意味があるのよぉぉぉ?」


どうやら今回は被弾しなかったビール缶が、すぐさま逆向きに発射される。


「返す?
口紅を?男性に?
…どうやって?」


飛ぶビール缶。
受け止められるビール缶。


「どうやって、ですって?
やぁねェ、透子ちゃんったら。
ソレ、聞くぅぅぅ?」


「ハイ、教えてください」


飛び交うビール缶。
ナゼだか数が増えている。

しかも、ナゼだかピーナッツまで飛び始めた。

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