その嘘に踊れ
犯した過ちに絶望している暇はない。
冷静に状況を分析し、最善の策を取らなければ。
って、こーゆーの、ほんとはしーちゃんのほうが得意そうだケド。
まず、送られてきたこの画像。
誰が撮った?
このメールアドレスを知っているのは、いつもパチンコ店で待ち合わせているあの男だけ。
だが、彼の仕業と断定するのは早計だ。
だってこの画像を送ってきた目的はおそらく、『知っているぞ』と脅しをかけ、それをネタに俺を誘き出して捕えるコト。
俺は彼の呼び出しには簡単に応じるのだから、こんな回りくどいコトをする必要はない。
彼を問い詰め、口を割らせ、このアドレスを入手できるのは…
アイツらしかいない。
だが、それならなぜ、すぐに襲ってこない?
わざわざ誘き出そうとする?
花火の夜の写真を撮れたというコトは、マンションの場所も特定済みだろうに。
アイツらの最終目的は俺ではなく、俺が匿っている透子のはずなのに…
(あー… そうか。
撮ったのは、アイツらじゃねェンだ…)
送られた画像をもう一度注意深く眺めて、アオはキレイな顔を苦々しく歪めた。
写っているのは、透子。
転落防止用の、どこにでもあるタイプの柵。
そして、夜空。
少し下の位置から仰ぐアングルで撮られたその画像には、狙ったように『透子の生存』以外の情報がない。
なんてこった、だよ、コレ。
アイツらに透子の居場所はバレていない。
だが、居場所を知り、画像まで撮って、アイツらにリークした何者かがいる。