その嘘に踊れ

「ただいま」


どうしても増してしまう眼球の水分含有量を隠すためにビニールバッグに視線を落としたアオは、最後になるであろう帰宅の挨拶をした。

そしてそのまま透子の目を見ず、ソレを彼女に差し出す。


「コレ…着て?」


「…
浴衣の次はナース服とか?」


「アハハ、イイねー、ソレ。
俺も白衣着るから、オトナのお医者さんごっこしよっかー」


「そんなバカな。
あ…コレ…」


受け取ったビニールバッグからゴソゴソと中身を引っ張り出して、目の前に広げた透子は…


「私の制服じゃない」


全てを見通す思慮深い黒水晶で、未だ目を合わせないアオを射抜くように見つめた。

急がなくちゃ。

時が経てば経つほど、この聡明な少女は真実に近づいてしまう。


「や、実はさー、コレクションするなら、コレ着たしーちゃんの写真もつけなきゃ意味ないナーって、気づいちゃってさー…」


とかなんとか、変態じみた言い訳をしながら透子の手錠を外して。


「俺、コッチで待ってるから。
着替えたら呼んで?」


とかなんとか、そそくさと寝室を出て…

アオも、夏らしい派手な色彩のシャツを脱ぎ捨てた。

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