その嘘に踊れ

「着たー」


ドアの向こうから、幼い呼び掛け。

そう言えば、この幼さの中に潜むオトナ彼女に、いつも翻弄された挙げ句泣かされたっけ。

それすらも今は懐かしい。

寝室に足を踏み入れれば…

プリーツスカートと二本のラインとスカーフは同色の濃紺。

それ以外はカラーまで純白のセーラー服。

本来の姿に戻ってしまった、愛しい人。


「可愛いよ、しーちゃん…」


目を伏せ、唇だけで微笑みながらアオは呟いた。

ほんと可愛いよ。
とても似合うよ。

似合うケド…

やっぱり、ワンピースのほうが君らしいと思うンだ。

白いワンピースを着て、濡れた髪から雨粒を滴らせながらあどけなく笑っていた君が、俺の…俺だけの『しーちゃん』なんだ。


「…
アオも着替えたンだ?
今日はナニがあるの?」


黙りこむアオに、眉根を寄せた透子が訊ねた。

ほらぁ…
グズグズしてるから、発動しちゃったよ。

彼女の他心通。


「別に?
ナニもないケド」


「そう?
いつもは派手なチンピラファッションのアオが、全身真っ黒なのに?
ナニもないの?」

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