その嘘に踊れ
チンピラ、て…
うん… まぁ、いいケド。
ある方面の方々から、逆に目につかないよう派手にしてたワケだから、狙い通りなンだケド。
チンピラ…
「いやいや。
コッチが俺の本当の姿なの。
アルファベット一文字のコードネーム貰って、黒服着てレイバンかけて、人間社会に紛れる宇宙人を管理してンの」
身体にフィットする黒いハイネックカットソーと、動きやすそうな黒いカーゴパンツを身に纏ったアオは、額に手を当てて笑った。
M○Bか。
てか、こんな時にまで嘘か。
「ピカってなるアレにヤられて、記憶を消されてしまえばいいのに」
こんな時だなんて知る由もなく、透子がいつも通りの毒を吐く。
そう、その調子。
君はなんにも知らずにいればいいンだよ。
「あれ?襟が… ちょっと後ろ向いてみ?」
そんなテキトーなコトを言ってさりげなく近づき、警戒もせずに背を向けた透子に腕を回して抱きしめる。
ってコレ、なろ抱きじゃん。
だが、断じてスイーツ(笑)シチュエーションなんかじゃない。
透子お得意の胸キュン潰しが繰り出される前に、銀のケースから現れた注射器の針が、彼女の細い首に突き刺さった。
君はなんにも知らずにいればいいンだよ。
知らずに眠っていればいいンだよ。
黒い服の訳が、返り血を浴びても目立たないから、なんてコトも。
強制的な眠りに落ちた愛しい人を抱き上げて、アオは夢の余韻が残るマンションを後にした。