その嘘に踊れ
ソレはいったい、誰に対する嘲りの笑み?
ありもしない与太話を信じて怯え、『再現』なんて言っちゃうアイツらに対しての?
ありもしない与太話だと端から諦め、立ち上がろうとしない自分自身に対しての?
アイスブルーの冷たい瞳は、心の内を読ませない。
「アイツらに命じられて、仲間がおまえを尾けてたンだ。
気づかれないよう、大人数でローテーションを組んで、な」
バカにしたような笑みを浮かべ続けるアオとは違い、至って大真面目にビジネスマンは言った。
途端に、アオの表情にも緊張が走る。
「その中の数人が、二駅先にあるパチンコ店付近で消息を絶った」
「ソイツらを、俺が始末したって?」
「いや、おまえに仲間は殺せない。
アイツらだって、そんなコトはわかってる。
だから、消えた奴らをおまえが取り込んだンだと、アイツらは判断したンだ」
「そんなバカな。
……あ」
誰かサンの口癖、感染ったカナ、なんて思わず口元を手で押さえたアオを…
気づけば、ビジネスマンが見つめていた。
横目で、とか、さりげなく、とかではなく。
首を回して真っ直ぐにアオを見つめていた。
「コッチ見んな」
「本当におまえ、ナニも知らなかったンだな。
でも、もうどっちでもイイ」
顔を顰めるアオに、ビジネスマンは薄く微笑んだ。