その嘘に踊れ
いやいや、アンタ…
自分のクビより、コーヒー塗れのビジネスマンを心配したげて。
てかコレ、どーなンの?
ビジネスマンの覚悟からの、アオの出来ない選択からの、モブギャルコーヒーレディの失職危機?
切迫した状況からの、まさかのコント展開?
はなだ、こんなの処理できない。
だが、傍目にはどれだけコントでも、ギャルコーヒーレディにとってはこの上なく切迫した状況だったようだ。
キっと顔を上げてビジネスマンに駆け寄り、濡れたシャツのボタンに手をかける。
「失礼しゃっス!」
「え?え?ナニ?ナニ?」
「とりまトイレで洗ってみますから!
ダメならクリーニング代出しますから!
クレームなんてつけませんよネ!?
てか、つけないでネ!?ネ!?ネェェェェェ!!??」
「うっそ。
脱げって?ココで?
ちょ…やめてェェェェェ!!??」
ビジネスマンが、公共の場で襲われるオトメになっちゃいマシタYO!
必死の形相で、肩まではだけたシャツを押さえるビジネスマン改めオトメ。
必死の形相で、さらにシャツを引っぺがそうとするコーヒーレディ。
そんな二人を尻目に、アオは静かに席を立つ。
それに気づいたビジネスマンは…
「おい、待っ…
っ」
伸ばしかけた手を止め、口を噤んだ。
振り返ったアオの、意味ありげに光るアイスブルーの瞳を見たから。