その嘘に踊れ

周囲から頭一つ分飛び出る長身。

黒いハットからこぼれる金髪に、マッチョな身体を包むロング丈の白いTシャツとゼブラ柄のスキニーパンツ。

目立つよ。
一目で君だとわかったよ。

なんでココにいるの、デイジーくん。


「アーオーくーん!
偶然ねー!」


デイジーも目ざとくアオを発見したようで、ブンブン手を振りながら駆け寄ってきた。


「…どうしてココにいる?」


「アタシ?
アタシはね、出勤前にコレを買いに来たの」


アオの問い掛けに、デイジーは持っていた紙袋の中から薄紙で包装された一升瓶を取り出す。


「珍しい焼酎でね、ソコにある酒屋にしか売ってないの。
とっても美味しいのよぉ。
…あら」


瓶をクルリと回して、アオに銘柄を見せて。
後方にある、老舗風の酒屋を指差して。

それから、今やっと気づいたようにマジマジとアオを見つめて…


「今日はいつもと雰囲気違うわね。
ナニ?誰かのお葬式?」


デイジーは小首を傾げた。

あー…うん。
まぁ、黒ずくめだケドね。

お葬式にはカジュアルすぎンだろ。

これは本当に偶然か?

偶然知り合ったご近所サンと、今、この状況下で偶然出くわしたのは、本当に奇跡的な偶然の連鎖なのか?

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