その嘘に踊れ

コイツらときたら…
全ての黒い服が、喪服だと思うなよ。

てか、『ご愁傷サマ』はオタくんだから。


「後ろ、開けて」


葬式ネタにはツッコまず、アオは痛車の後部座席を親指でチョイチョイと指した。

ロックが解除されると、すぐにドアを開けてデイジーを押し込み…

再び、閉める。


「え… アオさんは…」


「俺はいい。
コイツだけ、好きなトコに送ってやって」


ウインドウに手を掛けて訊ねたオタくんに、アオは素っ気なく答えた。

途端に後部座席のデイジーが、なんでよ、コワいわ、守ってよ、と暴れ出すが…


「狙われたのはおまえじゃない、俺だ」


とアオが早口で言うと、目を丸くして押し黙る。


「俺はアチコチから恨みを買ってる悪人だ。
だからもう近づくな。
ちなみにしーちゃ…芦原透子は、俺が誘拐した被害者だ。
警察が何か聞きにやってきたら、全部俺のせいだと言え。
おまえらも芦原透子も、俺とは無関係だ、と。
わかったな?」


一方的に捲し立て、アオは絶句する二人を残して素早く痛車から離れた。

これでいい。

後は当初の予定通り車を一台拝借して、アイツらを撒いて、自分のするべきコトを…

無駄な時間を費やしちゃったケド、それも悪くなかったナ、なんて思って、アオはほんの少しだけ口角を上げた。

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